ÈÇÓ×ÅÍÈÅ ßÇÛÊΠ- ßÏÎÍÑÊÈÉ
STUDY LANGUAGES - JAPANESE

8. JLPT


Menu JLPT / 1999: JLPT-1 (N2-N1)
Japanese language proficiency test
009 - Task 1
Grammar and Reading

 
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1・2・3・4から最も適当なものを一つ選びなさい。
同じ1つの事柄でも、表現のしかたで大いに印象が異なってくる。学生たちに、「私たちの人生はたかだか100年、短いものだ」と言っても同意の反応はない。100は小さい数だが、「年」は長いと感じているから、100年は短くないのだ。しかし、「私たちの入生はた かだか30億秒、短いものだ」と言い換えると「おや!そうだなあ」という顔つきになる。目の前を刻々と流れる「秒」という時間は極めて短いから、30億という大きな数でも相殺できない(注1)からだろう。(中略)
どんな話題でも、数字を挙げると正確そうに見えるが、その数と単位の組み合わせによって、わかりやすくも、わかりにくくもなる。その使い分けに十分注意する必要がある。数 字が出された根拠とともに、数の単位に注意しておかないとごまかされることがあるからだ。実感を伴わない巨大な数か、いかにも大したことがなさそうな小さな数字で煙に巻いてしまう手口(注2)が、よく使われている。
交通事故数を例にとってみよう。日本では、1年で約1万人が交通事故で亡くなっている。好調阪神で満員になった甲子園の観客5人に1人が(つまり、あなたの前後左右の誰かが、いやあなた自身かもしれない)1年のうちに亡くなり、5年で観客がゼロになるくらいの多い数である。しかし、1日にするとほぼ30人で、それを1つの都市にするとゼ ロか1人だから、「今日の交通事故数(注4)が警察署前に掲示されても人々は大きな数とは思わない。つまり、あの掲示は、交通事故の恐ろしさを伝えているのではなく、逆に交通事故は少ないのだと安心させており、かえって事故を増やす効果になっていると言えるだろう。
昨年、戦後の交通事故の死者総数が50万人を超えたという報道があった。日本は、事故 から24時間以内の死者しかこの統計に入れないが、国際的に主流となっている30日以内の死者数とすると60万人を超えるだろう。この数は静岡市や新潟市のような地方中核都市の人口に匹敵し、それだけの数の人々がすべて交通事故で姿を消してしまったことを意味する。このように積分(注5) すると「交通戦争」という言葉が実感できる。警察署の前には、せめてこの累積(注6)死者数が掲示されてしかるべきだ(注7)と思う。
クルマ社会の異常さを感じている私だから交通事故数を話題にしたのだが、このような 数字のトリックはどこにでもころがっている。なぜそのような数字として発表したのかを考え、発表者の意図を見抜くことが大事だと思う。
(「銀河時評一30億秒の人生」『SCIaS』97/8/1号による)
(注1)相殺できない:ここでは、「30億」から受ける印象が「秒」から受ける印象を打ち消すことができないこと
(注2)煙に巻いてしまう手口:ごまかしてしまう方法
(注3)好調阪神で満員になった甲子園:「阪神」はプロ野球のチーム名。「甲子園」はそのチームの野球場で、全部で5万人ぐらい入る。「阪神」が勝ち続けてその試 合を見に来るお客さんでいっぱいの甲子園という意味
(注4)今日の交通事故数:その地域で起きた一日の交通事故数、交通事故による死者数、負傷者数などが発表されている
(注5)積分する:ここでは「これまでの数を総合して考える」と理解してよい
(注6)累積:今までの数字の合計
(注7)~てしかるべきだ:~て当たり前だ
問(1)  ①「大いに印象が異なってくる」とあるが、たとえばどのように異なるのか。
     1.100年と30億秒は同じ長さなのに、30億秒と言うと長く感じる。
     2.100年と30億秒は同じ長さなのに、30億秒と言うと短く感じる。
     3.100年と30億秒は異なる長さなので、30億秒と言うと長く感じる。
     4.100年と30億秒は異なる長さなので、30億秒と言うと短く感じる。
  
問(2)  ②「いかにも大したことがなさそうな小さな数字」の例は、次のどれか。
     1. 一年間に交通事故で死亡した人の数
     2.甲子園に野球を見に来た観客の数
     3.自分か自分のとなりにいる入が死ぬ確率
     4.警察署の前にある「今日の交通事故数」
  
問(3)  ③「あの掲示」とあるが、それにはどのような問題があると筆者は考えているのか。
     1. 警察署がある地域では交通事故が少ないから、心配しなくてもよさそうだと思わせていること
     2.掲示されている交通事故の数があまりにも大きいので、かえってその現実が実感できないこと
     3.掲示は交通事故が少ないという印象を与え、事故を減らす効果を上げていないと思われること
     4.交通事故の恐ろしさよりむしろ、自分が事故にあわなかったという安心感を与えてしまうこと
  
問(4)  ④「このような数字のトリック」とあるが、どのようなごまかしか。
     1. 人生の長さを述べてから交通事故の問題に論を展開すること
     2.部分的な数字だけを見せて、全体の数をわかりにくくすること
     3.野球の観客数を使って、交通事故の死者数を説明すること
     4.国内の数字だけ見せて、国際的に比較した数字を見せないこと
  
問(5)  交通事故の死者数の示し方について、筆者はどうすれば最もよいと考えているか。
     1. 警察署の前に掲示してある交通事故数には真実を書いた方がよい。
     2.警察署の前の交通事故数は役に立っていないので掲示しない方がよい。
     3.警察署の前には戦後の交通事故による死者数の合計を出した方がよい。
     4.警察署の前の交通事故数には、事故から30日以内の死者数を出す方がよい。
  
問(6)  戦後の日本の交通事故による死者数について、筆者はどのように感じているのか。
     1. 「戦争」と言ってもいいほど死者が多い。
     2.一都市では1日ゼロか1人だから、少ない。
     3.50万人では多くないが、60万人は多い。
     4.国際的に比べても、人口の割りには少ない。
  
問(7)  筆者は数字を使った説明について、どのように考えているか。
     1. 数字を使った説明にはごまかされやすいので、信用してはならない。
     2.数字は単位によって受け取り方が異なるので、説明には使わない方がよい。
     3.たとえ正確にみえる数字でも、それの持つ意味を注意深く読みとるべきである。
     4.警察が発表した数字でも、ごまかしもあるので、資料としては使わない方がよい。