自分は自分であって、他の人ではない。食事をする暇がないので、誰かに代わって食べてもらう、などできないのは当然である。また、私たちは誰でも、その「自分」を知っている。自分は背が高いか低いか、どんな顔をしているか、気が強いほうか弱いほうか、これらが自分で分からないという人はまずいないだろう。自分で自分自身に対してもつ、このような認識内容を、一般 に①自己概念と呼ぶ。
( ② )、これは正常な大人の場合の話である。発達初期の乳児(注1)は、自分の体と自分の周囲のものとの区別がつかない、自分とお母さんとは別の人間だということにも気付いていない、といわれている。そのような状態では、③自己概念などは問題になるまい。いったいいつ頃から、 「自分」に気付き、「自分」という観念が生まれてくるのだろうか。
生まれて間もない乳児に、「自分の存在を感じているか」「自分をどう思うか」などと聞いてみ ても無意味である。そこで、問題を解明(注2)するためのテクニック(注3)の一つとして考え出されたのが、鏡に映った自分の姿を乳幼児に観察させる、という方法である。
(中略)鼻の頭に口紅で赤い印をつけて、子どもを鏡に向かわせたとする。その時、鏡映像を見て自分自身の鼻に触ったとしたら、( ④ )、といえるであろう。
そのような方法を用いた研究の一つ、ルイスとブルックスーガンの実験で、彼らは、生後9ヵ月から24ヵ月までの、六つの年齢グループの子どもたちを比較している。
各年齢グループの子どものうち、鼻に印をつけないのに鼻に触った子がいたパーセントと、鼻に印をつけた時に鼻に触った子のいたパーセントとの差を示したのが図の縦軸である。この差が 大きいほど、( ⑤ )、自分の鼻の印に気付いたが故に、鼻に触る行動が増えたことを示すといえる。これから明らかなように、⑥鏡映像を自分だと気付く子どもは、15ヵ月から18ヵ月にかけての年齢で急に増え、24ヵ月の段階ではかなりの子が⑦「自分」に気付いていることが分かる。
このようにして得られた結果は、乳幼児の単なる視覚的な自己認知(注4)を示すにすぎないともいえようが、これがその後の自己概念の発達の基礎となることもまた確実であろう。
(高田利武「鏡の中の〈私〉」斉藤勇編『対人心理学トピックス100』誠信書房による) (注1)乳児:生まれてから1年ぐらいまでの子ども、乳幼児は3歳ぐらいまでの子ども (注2)解明:分からないところをはっきりさせること (注3)テクニック:技術、方法 (注4)認知:存在がわかること、存在を認めること
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問(1) ①「自己概念」の最も適当な説明はどれか。
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1.人は誰でも「自分」を知っているという認識 2.自分の性質や特徴についての自身の認識 3.食事などに対する自己管理についての認識 4.大人のように十分自立しているという認識 |
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問(2) ( ② )に入る最も適当な言葉はどれか。
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1.それで 2.一方 3.だから 4.しかし |
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問(3) ③自己概念などは問題になるまいとあるが、ここではどういうことか。
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1.自己概念という言葉は難しすぎてわからない。 2.自己概念などは言葉の意味が簡単すぎる。 3.自己概念を考えるのは乳児では早すぎる。 4.自己概念などは誰にもあり、問題はない。 |
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問(4) ( ④ )に入る最も適当な文はどれか。
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1.その子は鏡に映っているのが自分だと分かっている 2.その子は自分の鏡映像を他の子どもと考えている 3.その子は鏡に映った映像に興味を持っている 4.その子は目がよくて自分がよく見えている |
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問(5) ( ⑤ )に入る最も適当な言葉はどれか。
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1.偶然の結果として 2.印の色が赤いほど 3.自分の口ではなく 4.単なる偶然ではなく |
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問(6) ⑥「鏡映像を自分だと気付く」とあるが、具体的にはどうすることか。
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1.口紅のついた自分自身の鼻の頭に触れる 2.口紅のついていない自分の鏡映像に触れる 3.口紅のついた自分の鏡映像に触れる 4.口紅のついていない自分自身の鼻の頭に触れる |
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問(7) ⑦『自分』に気付いている とあるが、どういうことか。
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1.自分がどのように認識されているか自覚すること 2.「自分をどう思うか」という質問に答えられること 3.視覚的な自己認知ができているということ 4.自己概念が大人同様に発達しているということ |
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