ÈÇÓ×ÅÍÈÅ ßÇÛÊΠ- ßÏÎÍÑÊÈÉ
STUDY LANGUAGES - JAPANESE

8. JLPT


Menu JLPT / 1996: JLPT-1 (N2-N1)
Japanese language proficiency test
009 - Task 1
Grammar and Reading

 
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1・2・3・4から最も適当なものを一つ選びなさい。
旅に出るときカメラは一応持って行くけれど、実際に写真を写すことは少ない。
 大袈裟な主義主張があるわけではないけれど、私にとってはカメラは邪魔になることのほうが はるかに多い。その理由は----
カメラを持っていると、どうしても写真が撮りたくなる。いや、撮りたくなるというより撮ら なければいけないような義務感が心のなかに生ずる。
----「 A 」------
と思って感銘(注1)した次の瞬間、
----「 B 」-------
そんな意識が脳裏(注2)に蠢いて、これがわずらわしい。  
そればかりではない。いったんシャッターを押してしまうと、
-----「 C 」-------
 といった気分が心を占め、眼の前の佳景(注3)をしっかりと観賞し、記憶に留めおくという作用がどうしても甘くなる。中途半端にながめて、あとは後日写真ができあがったときに委ねて(注4)しまおうという心理が働く。
これがどうも風物を観賞するうえで間違った道のような気がしてならない。
私自身が入江泰吉(注5)さんとか浅井慎平さんとか、一流カメラマン並みの撮影技術を持っているのならよいけれど、実力は安いカメラでスナップを写す程度のもの。あとでできあがった写真は絵 葉書にも遠く及ばない。結局のところ、景色をろくに見なかったこととさして(注6)変わりがない。そんなことなら初めからカメラなど当てにしないほうがいい。数年前にそう悟って、以来めったに写真を撮らなくなった。
 カメラがないとなると、観賞法そのものもおのずと厳しくなる。余計なことを考えずにすむから、心ゆくまで(注7)賞味することができる。
 しかも、これから先に述べることは自分でもはっきりと断定できない微妙な心の作用なのだが、カメラがなければまのあたりに見たことをハーフ・メードの形で文章化しておくという仕事も、無意識のうちでやってしまうようだ。
-------この風景を小説の中で描写するとしたらどう書くだろうか--------
頭の片すみでそう考え、完全に文章化することまではしないカくなにかしら頭の中に文章に近 い形に変えて貯蔵するようになる。
ハーフ・メードというのは、その言葉の語義から言って50パーセントほど製品化することだろうから、私の場合はとてもそこまではやらないけれど、10パーセントか20パーセントくらい ( ③ )を自分の表現に変えて脳裏に記録するところがあるようだ。これがあとで小説やエッ セイを書くときに役に立つ。
こんな作用は一般の人々にはあまり必要なことではあるまいが、旅先で写真を撮るこどにばか り夢中になっている人を見ると、 --------あんなことで風物をよく観賞することができるのだろうか------
と、不思議に思わないでもない。
(阿刀田高『左巻きの時計』新潮文庫による)
(注1)感銘:深い感動
(注2)脳裏に蚕く:頭の中
(注3)佳景:いい景色で動き出す 
(注4)委ねる:任せる
(注5)入江泰吉、浅井慎平:有名な写真家
(注6)さして:それほど
(注7)心ゆくまで:気が済むまで
問(1)  ( A )( B )( C )に入る組み合わせとして、最も適当なものを選びなさい。
     1.
(A)いい景色だなあ
(B)うん、これでいい
(C)ああ、そうだ。写真に写しておかなくちゃあ
     2.
(A)ああ、そうだ。写真に写しておかなくちゃあ
(B)いい景色だなあ
(C)うん、これでいい
     3.
(A)うん、これでいい
(B)ああ、そうだ。写真に写しておかなくちゃあ
(C)いい景色だなあ
     4.
(A)いい景色だなあ
(B)ああ、そうだ。写真に写しておかなくちゃあ
(C)うん、これでいい
  
問(2)  ①「遠く及ばない」とはここではどういうことか。
     1.写真も絵葉書も実際の景色のすばらしさにはとてもかなわないこと
     2.自分で撮った写真より絵葉書の方がはるかにすぐれていること
     3.自分のカメラでは絵葉書のように遠くの景色がうまく撮れないこと
     4.絵葉書よりも自分で撮った写真の方がずっと価値があること
  
問(3)  筆者は自分の撮影技術をどのように思っているか。正しいものを選びなさい。
     1.カメラなど持つ資格はない。
     2.それほど上手だとはいえない。
     3.絵葉書の写真程度には写せる。
     4.かなり高い撮影技術を持っている。
  
問(4)  ②「余計なこと」とはどのようなことか。
     1.景色を十分に味わわなければならないということ
     2.景色をしっかり記憶しなければならないということ
     3.景色を写真に撮っておかなければならないということ
     4.景色を文章で表しておかなければならないということ
  
問(5)  (  ③  )に入る適当なことばを選びなさい。
     1.写した写真     2.頭の片すみの文章     3.眼で見たもの     4.微妙な心の作用  
問(6)  ④こんな作用とはどのようなことか。
     1.風景をある程度文章にして記憶すること
     2.風景を深く観賞し、記憶に留めること
     3.風景をテーマに小説やエッセイを書くこと
     4.風景の写真を撮ることに疑問を感じること
  
問(7)  筆者にとってカメラのない旅の利点は何か。
     1.写真の代わりに文章の形で残るので小説などの作品がふやせること
     2.無意識のうちにハーフ・メードの文章を書く技術が進歩すること
     3.一流カメラマン並みに写真を撮れたかどうか心配しなくてもいいこと
     4.風物を十分観賞できるうえに、ある程度文章化して記憶できること