Menu JLPT / 2004: JLPT-1 (N2-N1)
Japanese language proficiency test
010 - Task 2
Grammar and Reading

 
問題Ⅱ 次の(1)から(4)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして最も適当なものを1・2・3・4から一つ選びなさい。
 
(1) 日本には、①「湯水のごとく使う」という言い方がある。「金などを湯や水を使うように、考えなしに、どんどん使ってしまう」という意味である。
日本では、昔から水が豊かだと考えられてきた。雨も多いし川も多い。特に東京や大阪など大きな川のそばにある都市では、あまり水に不自由しなかった。
また、日本人は風呂が好きである。たっぷり入れた湯につかり(注1)、その湯をどんどん使って体を洗う。実に気持ちのいいものだ。しかし、最近は、「湯水のごとく」という言い方は、② ちょっと待ってくれという感じになってきた。世界の至る所で水が不足しているのである。日本のような国は例外で、大きな川の流域では、川の水をめぐって国同士が争っているほどである。雨が降らず、作物が全くとれない国も多い。
さらに、温泉を別にすれば、湯をわかすには燃料が必要だ。石油にしてもガスにしても、決して無限ではない。また、それらを燃やした時に出る二酸化炭素(注2)は、地球温暖化の原因とされている。
もはや、日本人は、湯や水を、文字通り「湯水のごとく」使えなくなっているのである。
(注1)つかる:入る
(注2)二酸化炭素(にさんかたんそ):CO2
問(7)  「湯水のごとく 」という表現の背景には、日本人のどのような考え方があるか。

1.水はたくさんあるので、気にしないでいくら使ってもいい。
2.水はたくさんあるが、大切に使わなければならない。
3.お金も水も気にしないでどんどん使ったほうがいい。
4.お金も水と同じように、他人に分け与えるべきだ。
  
問(8)  最近は、なぜ② 「ちょっと待ってくれ 」という感じなのか。

1.日本は、水を得るために他の国と争うようになったから
2.最近、日本では、昔ほど風呂で湯水を使わなくなったから
3.日本では、雨が少なくなって、水が不足してきているから
4.多くの国で水不足になっており、水の大切さを認識すべきだから
  
問(9)  湯を 「湯水のごとく 」使えなくなった理由として正しいものはどれか。

1.地球温暖化の影響で、湯の量が減っているから
2.温泉を作るためには、石油やガスなどの燃料をたくさん使うから
3.温泉から出る二酸化炭素は、地球に悪い影響を与えるものだから
4.水を湯にするために使う石油やガスは、いつかなくなるものだから
  

(2)克服することが難しい障壁(注1)があるときに、当初の目標の達成を断念(注2)して、その代りに、もとの目標と類似した他の目標を達成することによって、要求の充足(注3)をはかることを代償行動という。テニスが雨のためできなくなるとピンポンをしたり、A社に入社できなかった学生が、それと同じ系統のB社に入社して満足するようなものである。A子との恋が実らなかったので、A子にどことなく似たところのあるB子と親しくなったというのも同じである。以上のようなときBはAに対して ①代償価をもつ という。BがAに比べて達成するのが非常に容易であったり、価値的に低いものであれば、Bを達成してもAに対する代償にはならない。BがAに類似し、Bを得ることの困難度が、Aを得ることの困難度よりも大きいか、違いがないときに代償価は大となる。つまり ( ② )気持ちになるのである。
しかし代償行動はいつでも生ずるものではない。当初の目標を指向(注4)する要求が強く切実な場合には代償行動による満足は生じがたい。ただの遊び相手ならそれを失っても ほかのものにようて代償満足が得られても、真剣な恋の場合にはほかの人では代えられないのである。 ③ほかの人で代わりになるような関係であれば、本当に好きとはいえないのである。
(詫摩武俊『好きと嫌いの心理学』講談社による)
(注1)障壁(しょうへき):じゃまになるもの
(注2)断念(だんねん):あきらめる
(注3)充足(じゅうそく):みたす
(注4)指向(しこう)する:目指す
問(10)  ① 「代償価をもつ 」を表している発話の例として最も適当なものはどれか。

1.「本当はあっちが欲しかったんだけど、ちょっと手が出ないな。しかたがない、こっちで我慢しとこうか。これもけっこういいね。」
2.「本当はあっちが欲しかったんだけど、こっちでもいいかと思って、こっちにしちゃった。でも、これじゃ、やっぱりだめだね。」たんだ。よかったよ、待っていて。」
3.「本当にあっちが欲しかったので、他のものには目もくれずに、ずっと我慢していたんだ。よかったよ、待っていて。」
4.「本当はあっちが欲しかったんだけど、実はこっちにも目をつけていたんだ。どっちも手に入るとはね。」
  
問(11)  ( ② )に入るものはどれか。

1.Bを得たことでAを失ったような
2.Aを得たことでBを失ったような
3.Aを得たことでBを得たような
4.Bを得たことでAを得たような
  
問(12)  ③ 「ほかの人でも代わりになるような関係」 とはどんな関係か。
*本文中では「ほかの人で代わりになるような関係」となっていましたが、正答を導き出すためには影響はありません。

1.代償行動の要求を強く持つ関係
2.代償行動では満足できない関係
3.代償行動で満足できる関係
4.代償行動に至らない関係
  

(3)日本語の大きな特徴には、母音(注1)が多いということ以外に、唇をあまり使わずに、口の奥で構音する(言葉をつくる)という点もある。つまり、口元(注2)を動かさずに、喉で言葉をつくってる感じだ。だから、日本語をしゃべっていると、能面とかポーカーフェイスといわれる無表情な顔になる。外国人にとっては、 ①これ がすごく不気味(注3)に思えるらしい。 (中略)
試しに、鉛筆かボールペンか何かを、横向きにくわえてしゃべってみよう。
日本語だとちゃんと聞きとれるようにしゃべれるが、例えば英語だと、何言ってんだかわからなくなる。日本語は口の奥で構音するが、英語などは口の先っぽ(注4)で構音するからだ。口の先っぽに「口かせ」をはめられちゃうと、どうにもならないのだ。
中国語でも「口かせ」をはめると、何言ってるんだかわからなくなる。というよりも発音すること自体、ほとんど不可能になってしまう。同じアジアのお隣さんの国でも、全然違うのだ。母音が多いだけでなく、発音のしかたからしても、日本語は喉声向きにできている。逆に日本語だからこそ、喉声が完成されたのかもしれない。日本語はつまり ②喉語 なのだ。
(中野純『日本人の鳴き声』NTT出版による)
(注1)母音(ぼいん):声が口の中で通路を妨げられずに出される音。日本語では「あ、い、う、え、お」の音
(注2)口元(くちもと):口の周辺
(注3)不気味(ぶきみ):なんとなく気味が悪いこと
(注4)先っぽ(さきっぽ):先のところ
問(13)  ① 「これ 」とあるが、何のことか。

1.母音が多いこと
2.表情を変えずに話すことと
3.喉から音が出てくること
4.発音のしかたが違うこと
  
問(14)  文中の 「口かせをはめる」の説明として正しいものはどれか。

1.口元を見せないように能面を顔につけること
2.口が開かないように、唇を閉じたままにすること
3.唇が動かないように、細長いものを横にくわえること
4.小さい声でしか話せないように、口のまわりに布をかぶせること
  
問(15)  ② 「喉語」とは何か。

1.口元をあまり動かさず、口の奥で言葉をつくる特徴を持つ言語
2.口元をよく動かしながら、口の奥で言葉をつくる特徴を持つ言語
3.ボールペンを横にくわえると、発音することが不可能になるような言語
4.ボールペンを横にくわえて話すと、母音が聞き取りやすくなるような言語
  

(4)いつの時代も、親は子どもに成長してもらいたいと願っている。社会構造の変動が比較的少ない時代には、親が覚えている仕事のノウハウ(注1)や心構えを、そのまま子どもに伝えれば子どもは親の跡を継ぐことができた。かつては、世代が変わっても次の世代がおよそ同じ事をすることができるようにするための「①世代間の伝授(注2)」が行われてきた。
しかし、再生産(リプロダクション)を主目的として伝承(注3)を行い得た時代とは、現代は事情が異なる。情報革命を核とした世界的な社会構造変革の波の中で、親は子に、上の世代は下の世代に、②「何を伝承したらよいのか」がわかりにくくなってきている。 バブル(注4)期の社会的倫理(注5)規範の崩壊とその後のバブル崩壊による不況の長期化によって、大人たち自身が子どもたちに対して、「伝えるべきこと」や「鍛えるべきこと」に関して自信を失ってきている。
大人が確信を持って伝授・伝承すべきものを持たない社会は、当然不安定になる。たとえ子どもたちの世代が、それに反抗するにしても、そのような伝承する意志には意味がある。世によく言われる子どもの問題の多くは、「子どもたちに何を伝えるべきなのか」について大人たちが確信や共通認識を持てなくなったことに起因(注6)している。
(斎藤孝「「できる人」はどこがちがうのか」筑摩書房による)
(注1)ノウハウ:やり方
(注2)伝授(でんじゅ):伝えること
(注3)伝承(でんしょう):古くからの制度・風習などを受け継ぎ伝えること
(注4)バブル期:日本で土地や株の値段が急激に上昇した時期(1980年代後半)
(注5)倫理(りんり):行動規範としての善悪の基準
(注6)起因(きいん):それが原因になって、何かが起こること
問(16)  ① 「世代間の伝授」 とあるが、どのような伝授が行われていたか。 

1.親は自分の仕事を自分がやってきたとおりに子どもに教えていた。
2.親は子どもが成長できるように自分より難しい仕事をさせていた。
3.親は社会構造の変動に合わせて、子どもに教える仕事の内容を変えていた。
4.親が仕事のしかたや心構えを直接教えなくても、子どもは同じことができた。
  
問(17)  ② 『何を伝承したらよいのかがわかりにくくなってきている」のはなぜか。

1.情報革命により、大人が自信を失うような情報しか得られなくなったため
2.バブルが崩壊し不況が続いて、どのようなものを生産しても売れないため
3.社会情勢の変化により、正しいと思われていた規範がそうでなくなったため
4.世界中の情報が簡単に得られるようになり、子どもの興味が親と反対になったため
  
問(18)  筆者は、最近の子どもの問題の原因は何だと考えているか。

1.子どもに成長してもらいたいと思う親が少なくなっていること
2.社会の変化により、大人が子どもに技術を伝える機会がなくなったこと
3.子どもが反抗するため、大人が何かを伝える気持ちをなくしてしまったこと
4.大人が子どもに何を伝えたらいいかわかちず、社会が不安定になっていること