Menu JLPT / 2003: JLPT-1 (N2-N1)
Japanese language proficiency test
010 - Task 2
Grammar and Reading

 
問題Ⅱ 次の(1)から(3)の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして最も適当なものを1・2・3・4から一つ選びなさい。
 
(1)①手紙というのが、どうも苦手である。手紙を書く必要に迫られたりすると、とつぜんクシャミがとまらなくなったり、おなかをこわしたりする。
もともと、文章を書くのがいやだ、ということもある。が、それ以上に手紙を書くのがいやなのは、あの形式のせいである。
まず、「拝啓」というのが気に入らない。拝啓(はいけい)というのは「つつしんで申し上げる」というイミらしいが、いまどきそんなことを知っている人は、あまりいない。イミもわからずに、なぜ「拝啓」なんて書かなければいけないのか、ぼくにはまったく理解できないのだ。
(中略)
ま、いちがいに「形式」がいけないとは言わない。もともと形式というのは、みんなの便利さのためにあるものだ。形式があるからこそ、ぼくたちは②余分なことに余計に神経を使わずにすむ。もし、手紙の形式というものがなかったら、ぼくたちは手紙を書くたびに、「どう書き出せばいいだろうか」とか、「こう書いたら失礼にならいだろうか」とか、あれこれこまかいことに気をつかって、書かないうちからクタクタ(注1)になってしまうかも知れない。
が、そういう形式の効用(注2)は十分認めたうえで、なおいまの手紙の形式は死んでいる、とぼくは思う。で、それがぼくたちの首やからだに巻きつき、ぼくたちの手紙を窒息状態に追いこんでいると思う。形式をちゃんとこなせば(注3)こなすほど、手紙からどんどん生気 (注4)が失われていくのだ。
 
(天野祐吉「バカだなア」筑摩書房による)
(注1)クタクタになる:とても疲れる
(注2)効用(こうよう):役に立つこと
(注3)ちゃんとこなす:うまく使う
(注4)生気(せいき):生き生きした力
問(8)  ①「手紙というのが、どうも苦手である」とあるが、その一番の理由は何か。

1.文章を書くのが好きではないから
2.手紙の形式が好きになれないから
3.手紙をどう書き出せばいいかわからないから
4.手紙を書こうとすると体の具合が悪くなるから
  
問(9)  ②「余分なことに余計に神経を使わずにすむ」とは、たとえばどんなことか

1.疲れたり、体の調子が悪くならないように心配しなくてすむこと
2.書き始めの表現や相手への礼儀を表す言葉を考えなくてすむこと
3.相手の使う形式に合わせて、自分の手紙の形式を変えなくてすむこと
4.自分で考えた言葉をどんどん使って、相手に失礼になっても気にしないこと
  
問(10)  筆者は手紙の形式についてどのように考えているか。

1.形式はないと不便だが、現在の形式は手紙を書く意欲を奪うものだ
2.手紙の形式のもともとの意味を知れば、よい手紙が書けるようになる 。
3.相手に対して失礼な手紙を書きたくないなら、形式は無視した方がよい。
4.形式があるからこそ、自由に好きなように相手に手紙を書くことができる。
  

(2)人間と動物、動物と機械は、それぞれ決定的に異なる何かがあるのだろうか。それとも、その違いは、距離の差にすぎないのだろうか。
ここでは、たとえばそのなかの二つ、動物と機械の差を考えてみよう。たしかに機械は無生物であり、動物は生物の一部にほかならない。( ① )は対立する概念なので、機械と生物はまったく異なるものということになる。
だが、たとえば現代の自動車工場では、日々、ロボットを使って自動車が製造(せいぞう)されている。この様子は、極端(きょくたん)に言えば、まるでロボットが自動車をつくり続け、人間の労働者は、あたかも(注1)そのロボットの補佐役(注2)のようであるとも言える。そして、この工場のシステム全体を見ると、それがひとつの生き物のようである。これは、機械が機械を生んでいる、動物で言えば「世代交代」をしているかのように思える光景だ。
「世代交代」は、「自己増殖(注3) 」と並んで、生物と無生物を分ける、生物の決定的な特徴とされている。だが、上記のように、今日のロボットや自動車は機械であっても、またその巨大な集積であるFA工場 (注4) は機械システムであっても、②「世代交代」という機能をもっており、少なくともその面では、動物もしくは、動物の種の姿に近いと考えることができる。そう考えると、生物とは対立するはずの機械も、③その違いは単に距離の差に過ぎないと言える。
 
(奥野卓司「人間・動物・機械一テクノ・アニミズム』角川書店による)
(注1)恰も(あたかも):まるで
(注2)補佐役(ほさやく):仕事を助け、補う(おぎなう)人
(注3)増殖(ぞうしょく):増えて多くなること
(注4)FA工場:生産システムが自動化されている工場
世代交代:せだいこうたい
問(11)  ( ① )に入る適当なことばはどれか。

1.生物と動物
2.生物と人間
3.無生物と生物
4.無生物と機械
 
問(12)  筆者は自動車工場における人間の役割はどのようだと言っているか。

1.ロボットではできないような作業をしている。
2.ロボットが自動車をうまく作るのを助けている。
3.ロボットが自動車を作るのを見ているだけである。
4.ロボットに指示を与え、うまく使って、自動車を作っている。
  
問(13)  ここで言う②「世代交代」とは具体的に何を指しているか。

1.ロボットが自動車を作り出していること
2.人間が新しい機械を作り出していること
3.同じ種類の自動車がどんどん作られていること
4.人間がロボットを使って機械を製造していること
  
問(12)  ③「その違い」とは何と何の違いか。
1.ロボットと自動車
2.動物と動物の
3.動物と機械
4.動物と生物  
 

(3)大人のことばと子どものことばの場合も、大人のことばが「中心」で、子どものことばは「中心」ではありません。だから、普通は、私たちは、「中心」であるところの大人のことばを維持しなければならないと思っており、子どもが何か変わった言い方をしますと、( ① )。
しかし、その反面(注)、子どものことばというのは、必ずしも全部大人のことばに合わせて直されてしまうわけではありません。それは、ことばというのが、時代とともに変わるということをみればすぐわかることです。「ことばが変わる」という場合、それは世代から世代への移り変わりで、②ずれが起こっているということですし、そのずれというのは、子どものことばに始まったものが、それを直そうとする試みにも関わらず、しきれなくて、それが大人のことばの中に入り込み、言語を変えるのだと考えることができます。こんなふうに考えてきますと、③「中心」でないものも、最近のことばを使いますと、文化というものを「活性化」する、つまり、それに活力を与える-------そういう意味を持っているものとしてとらえなおすことができるわけです。
 
(池上嘉彦「ふしぎなことばことばのふしぎ』筑摩書房による)
(注)反面(はんめん):ほかの面から見ると
問(13)  ( ① )に入るものとして最樋当なものはどれか。

1.それはおかしいと言って直すことをやります
2.それはいいと言って大人の言葉に取り入れます
3.無理に直そうとしないでしばらく様子を見ます
4.全く直そうとしないでそのまま放っておきます
  
問(14)  ②「ずれが起こっている」とは、例えばどういうことか

1.大人のことばが子どものことばを活性化すること
2.子どものことばが大人のことばの中に入り込むこと
3.子どものことばと大人のことばがお互いに活性化しあうこと
4.大人のことばが子どものことばの中にいつのまにか入り込むこと
  
問(15)  ③「『中心』でないもの」とは何を指すか。

1.昔のことば
2.大人のことば
3.子どものことば
4.世代間のことばのずれ