(1)子どもが自室に閉じこもるのは親から独立した自分だ
けの精神的世界を持ちはじめたことの現われだろうから、悪いとばかりは言えない。子どもだって、自分が親に完全管理されることを
いつか嫌うようになるもので、もしそうならないとすれば、また①別の心配が生じるだろう。
しかし、そうは言っても、これは程度問題で、子どもが学校から帰ってから寝るまで、食事の時を除いてずうっと自分の部屋にいる、
というのでは、家族間 のコミュニケーションも稀薄(注1)になる。だから、子どもがある年齢に達して自
室に閉じこもりがちになることを、一つの成長過程として認めるにしても、建築的に②それを 助長(注2)す
るような空間のつくり方は避けるべきだろう。
そういう考え方にしたがうと、子ども部屋は、あんまり居心地(注3)が良くない方がよいのではないか。居
心地が良くない、というと語弊(注4)があるが、少なくても良すぎない方がいい。もっと正確に言えば、あ
る内向的な(注5)時を過ごすには居心地がいいが、その気持ちがふっと外へ向いた時には、多少気づまりに
感じられて、自然に部屋の外へ、居間や食堂へ出ていきたくなるような部屋がいい。
(渡辺武信『住まい方の思想』中央公論社による)
(注1)稀薄:少なかったり、うすかったりすること
(注2)助長:良くない傾向を強めること
(注3)居心地:そこにいるときの気分、気持ち
(注4)語弊:誤解されるような言い方
(注5)内向的:心の働きが自分の内部に向かうようす
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