Menu JLPT / 2001: JLPT-1 (N2-N1)
Japanese language proficiency test
009 - Task 1
Grammar and Reading
(Valid answers are at the bottom of this page)

 
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答 えは、1・2・3・4から最も適当なものを一つ選びなさい。
法の下での人間の平等は、憲法でも保障された人間の権利で ある。しかし現実には、すべての人間や人間活動に平等が保障されているわけではない。社会的・民族的差別の問題は大きい。ここで はこうした基本的人権(注1)にかかわる問題ではなく、職業、教育や所得に関する平等・不平等問題を論じ る。
例えば親の階層(職業や所得)の不利さが子供の学歴達成に支障(注2)となることを考えてみよう。親の所 得が高くないために、子供が大学進学をあきらめたケースはどうだろうか。 奨学金制度が充実しておれば、本入の能力と努力がある 限り、大学進学の道は開かれている。わが国の奨学金制度がさほど充実していないことは、アメリカとの比較で明らかであ る。わが 国には機会の不平等は残っているといえる。逆に、アメリカでは機会の平等への執着は強いといえる。もっともわが国においても、国 民の所得水準が向上したことによっ て、親の経済力が原因となって進学できないというケースは以前より減少しており、この 問題 の不平等性は低下している。
もう一つ例をあげてみよう。企業が新卒者(注3)を採用する時に指定校制度というものがある。特定大学の 学生のみに受験・面接の機会が与えられ、他の大学生にはその機会がない制度である。企業がこの制度を採用する理由は次の通りであ る。第一に、入学試験のむず かしい大学や、良い教育をしている大学の学生は、知的活動や生産性の上で優秀な学生という印象があ る。第二に、それらの大学の卒業生が、企業で良い成果を上げていることを その企業が知っている。第三に、応募してくるすべての 学生を無制限に選考すればコスト(注4)がかかる。これらを要約(注5)すれば、 企業にとっては合理的かつ選択のリスク(注6)が小さい制度なのである。
ただし、ここで指定校制度の合理性を指摘することによって、「受験戦争」を肯定する気はない。(中略)過酷な(注7)「 受験戦争」には負の側面が多いので、戦争をなくする必要性は高い。
ところで、特定大学以外の学生にとっては、就職試験の機会が最初から排除されているので、機会の不平等と映るかもしれない。確か にその側面があることは否定しえないが、 よく考えるとその人達にも特定の大学の受験の機会が高校生の時にあった わけで、機会の平等が完全に排除されていたとはいえない。実際にその大学を受験したかどうかは問題で はない。しかし高校生にま で企業に指定校制度があることを知っている、と期待するのは酷である(注8)。機会の平等をこのように考 えてみると、意外に複雑な原理なのである。
機会均等の原理を実施することはそう容易ではないが、理想として常に念頭(注9)におかれるべき原理であ る。すべての意欲のある人には、参加と競争の機会が与えられることが望ましい。教育の機会、仕事の機会、就職の機会、昇進の機会 、人生上の様々な活動において多くの人に平等な機会が与えられた末に、参加者が競い合うこととなる。競争の結果勝 者と敗者が出 ることは仕方のないことだし、勝者にも順位づけが行われることもやむをえ ない。
(橘木俊詔『日本の経済格差』岩波書店による)
(注1)人権:人間が人間として当然持っている生命・自由・名誉などに関する権利
(注2)支障:障害、さしつかえ
(注3)新卒者:その年に学校を卒業したばかりの人
(注4)コスト:費用
(注5)要約する:要点をまとめて短く表現する
(注6)リスク:危険
(注7)過酷な:非常に厳しい
(注8)酷である:厳しすぎて無理がある
(注9)念頭におく:意識する、考慮する

問(1)  第2 段落の内容と合っているものは 、 どれか 。
     1.日本では親 の経済力が高くないために子供が進学できないケースは減ってきている。
     2.日本では親の経済力が高くないために子供が進学できないケースが依然として多い。
     3.アメリカでは機会の平等が重視されるが、奨学金制度は日本ほど充実していない。
     4.アメリカでは機会の平等が日本ほど重視されないが、奨学金制度は充実している。
 

問(2)  指定校制度の特徴として、筆者の説明と合うものはどれか。
     1.特定の大学 の卒業生だけがその企業で働くようになるため、企業に対して忠実な社員を増やすことができる。
     2.多くの学生の中から選ぷことになるため、企業は入社後すぐに成果を上げられる人を見つけることができる。
     3.特定の大学以外の学生は、応募する際に試験を受けなければならないため、一定の基準以上の人を選ぶことができる。
     4.優秀な学生がいると考えられる大学の学生だけが応募できるため、企業は低いコストで適当な人を選ぶことができる。
 

問(3)  「その人達」とは、どのような人を指しているか。
     1.大学受験を しなかった高校生
     2.企業の採用試験に応募してくるすべての学生
     3.企業が受験・面接の機会を与えていない大学の学生
     4.企業が受験・面接の機会を与えている特定大学の学生
 

問(4)  高校の段階にまでさかのぼって考えた場合、指定校制度と機会の平等について筆 者はどのように評価しているか。
     1.高校生が指 定校制度がなくなることを期待するはずがないから、機会の不平等はそれほど大きな問題ではない。
     2.高校生は指定校制度があることを知ったうえで大学を受験しているのだから、機会の不平等はそれほど大きな問題では ない。
     3.どんな高校生でも指定校の大学を受験することはできるが、すべての受験生が合格できるわけではないから、機会が平 等であるとは言いきれない。
     4.どんな高校生でも指定校の大学を受験することはできるが、指定校制度の存在はほとんど知らないだろうから、機会が 平等であるとは言いきれない。
 

問(5)  筆者がこの文章で最も言いたいことは、どれか。
     1.すべての人 間活動に平等が保障されているわけではないが、法の下での人間の平等は憲法でも保障された人間の基本的な権利で あり、尊重されるべきである。
     2.日本では、国民の所得水準が向上したことにより、職業、教育や所得に関する不平等の問題は減ってきたが、社会的・ 民i族的差別の問題が大きくなっている。
     3.機会の平等は複雑で実践の難しい原理だが、職業や教育に関する活動においてすべての人に平等な機会が与えられるべ きであることを忘れてはならない。
     4.現代社会は基本的に競争社会であるから、競争の結果、勝者と敗者に分かれ、勝者にも順位がつけられることはやむを えない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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