Menu JLPT / 1999: JLPT-1 (N2-N1)
Japanese language proficiency test
010 - Task 2
Grammar and Reading

 
問題II 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1・2・3・4から最も適当なものを一つ選びなさい。
 
変わった趣味をいくつももっている人に会ったので、いろいろ質問して教えられたことがある。ある単調な趣味について、そんなことが面白いのですか、と聞くと"何でもそうだが、一生懸命やれば面白い"という答えだったので感心した。この人は趣味についてよくわかっている人だと思ったのだが、それは、趣味のみならず仕事でも同じであり、結局、①人生全体についても同じなのだろうと思う。
 何か面白い趣味はないかという人がいるが、一生懸命やらないのなら趣味はみんなくだらなくてつまらないのにちがいない。ゴルフでも、碁でも、釣りでも、テニスでも、何でもそうだが、下手でも一生懸命やる人と一緒になったときは、気持がよいのはだれしも経験があるところである。ボヤイたり、批評したりしながらやるのでは、②本当の面白さはその人から逃げていってしまう。面白さや幸福は自分の内部から湧いてくるものであって、外部に存在するものではないからである。
(中略)
 そういう点からいうと、仲間の目をいつも意識している日本人は、なかなか一つのことに熱中できない。周囲から何かいわれるのが恐いので、それへのいいわけを考えたり、逃げ道をあらかじめ作ったりするので、熱中する幸福は知らないまま一生を終わってしまうのが普通になっている。それだけならまだよいが、時には③他人にも同じことを要求して何かに熱中している人がいると、いろいろそのアラ探し(注1)をする。アラとして出る理由は、仲間への交際が粗略(注2)になっているというのがいつも第一で、仕事をしていないのではないかというのが第二である。
④そういう空気のなかで生活すると、人はだれでも知らず知らずのうちに、
(1)⑤弱者演出
(2)被害者演出
(3)不器用演出
をいつも心がけるようになる。日本人社会で暮らすのに忘れてはならない三種の神器(注3)はこれで、人と話をするときは"私なんかダメですよ"とか、"いつもいいようにやられてばっかり"とか、"失敗ばかりでそんな余裕はありません"とかを必ず三分間に一回ぐらいはいわないとうまくいかない。
栄進(注4)のお祝いをいわれたときでも"三流会社ですから部長になったといっても実態はヒラ(注5)と同じですよ"とか、"ムリヤリ引っぱり出されて委員になっただけで、五里霧中(注6)です"とかの返事をしないといけないことになっている。これはもう礼儀の一種であり、たくさんの人が反復(注7)使用するので磨きぬかれて、ほとんど芸術作品になったようないいまわし方もある。
⑥これは、対人関係円滑化の技術としては確かに有効だし、アメリカ人でもときどきはそういう会話をする。しかし決してホンキでそう思っているのでないところは、日本人として学ばねばならない。多くの日本人は演出を重ねているうちに、それが本当の自分になってしまっている。
 
(日下公人『新しい「幸福」への12章』による)
(注1)アラ:欠点
(注2)粗略(そりゃく):やり方がいいかげんなこと
(注3)三種の神器(じんぎ):何かをするときに必要な三つの重要な道具
(注4)栄進(えいしん):今までよりも高い地位や職などに進むこと
(注5)ヒラ:役職についていない人
(注6)五里霧中(ごりむちゅう)ようすがまったくわからず、どうしてよいかわからないこと
(注7)反復(はんぷく):何度も繰り返すこと
問(8)  ①「人生全体についても同じなのだろう」とあるが、ここで筆者の言いたいことは何か。

1.この人は趣味をたくさんもっているから人生を楽しんでいることだろう。
2.一生懸命やれば何でも面白いということは人生についても言えるだろう。
3.この人は変わった趣味をもっているから生き方も変わった人なのだろう。
4.人生についてもこの人から教えてもらえば面白くなることがあるだろう。
  
問(9)  ②「本当の面白さ」とあるが、趣味の「本当の面白さ」について筆者はどう考えているか。

1.趣味というのは、熱心にやればやるほど本当に面白くなるものだ。
2.趣味を本当に面白く感じるのは、上手な人といっしょにやるときだ。
3.他人から勧められてやり始めた趣味は本当に面白くなることはない。
4.趣味というのは、批評しながらやらなければ本当の面白さがわからない。
  
問(10)  ③「他人にも同じことを要求して」とあるが、どのようなことを要求するのか。

1.趣味でも仕事でも一生懸命にやること
2.周囲の幸福そうな人のアラ探しをすること
3.何かに熱中したりしないようにすること
4.現在の趣味の面白さについて話すこと
  
問(11)  ④「そういう空気」とあるが、どのような空気か。

1.弱い人を周囲の人が助けてあげるような空気.
2.仲間との交際をいいかげんにするような空気
3.熱心に仕事をしない人が批判されるような空気
4.何かに熱中している人が嫌がられるような空気
  
問(12)  ⑤「弱者演出」とあるが、どのように振る舞うことか。

1.自分の弱いところや欠点を人に隠そうとすること
2.人の欠点を探し出してそれを他の人に伝えること
3.体が弱いことが人にもわかるように工夫すること
4.自分が弱くてだめな人間だというふりをすること
  
問(13)  ⑥「これ」とあるが、何を指しているか。

1.芸術的な美しい言葉を使うこと
2.けんそんする言葉を口にすること
3.お祝いを言われたら礼を言うこと
4.自分の欠点を隠すようにすること
  
問(14)   筆者がこの文章で最も言いたいのはどのようなことか。

1.対人関係を円滑にする言葉は有効なものであり、日本人は自信を持って使うべきだ。
2.弱くてやられてばかりいる不器用な人の方が、日本人の社会では暮らしやすい。
3.人目を気にしてだめな自分を演じるより、何かに熱中して生きる方が人生は面白い。
4.仲間との交際や仕事をしっかりやっていれば、人にアラ探しされないで幸せになれる。