Menu JLPT / 1993: JLPT-1 (N2-N1)
Japanese language proficiency test
009 - Task 1
Grammar and Reading

 
問題Ⅰ 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。答えは、1・2・3・4から最も適当なものを一つ選びなさい。
次のA,Bは、新聞のコラム(囲み記事)です。
 
 〔A〕「近ごろの母親」
 冬場の小児科医院は忙しい。(中略)
こどもの受診に付き添うのはお母さんと決まっているようだが、東京・世田谷(せたがや)で長年開業している小児科医のM先生は「近ごろの若いお母さんには、まいります」ともらす。
忙中閑ありの宵、お酒をくみかわしながらうかがった診療場面での最近母親事情は-----。
〈第一場〉自分中心の母
「先生、この子、お薬ではだめなんです」
「どうして?」
「一発で治していただきたいんです。注射で」
「.....」 
 「だって、私、仕事が忙しいんですから」
 仕事を振りかざす母親に、M先生は言葉を失う。
 〈第二場〉泣き虫の母
   一カ月と置かずに幼児を無料検診に連れてくるお母さんがいた。M先生が「異状はありませんから、もう少し間を置いて来られたらどうですか」とさとした。たちまち、お母さんの目から涙があふれた。
 M先生は、少し言葉がきつかったかと、どぎまぎ。 「この人は、しかられるということがなかったのか」と考え込む。
く第三場〉○×式の母
「熱はどうですか」
「あります」
「きのうは?」
「ありました」
「どのくらい?」
この調子で、聞いたことしか答えない。国会の証人喚問ではあるまいし。○×教育の後遺症だろうかと思ったりする。
 (中略)
 優しい先生を困らせるとは、悪いお母さんたちだ。
 
〔B〕「父親はどこに」
「近ごろの母親」から、たちまち逆襲の便りが殺到した
先週、この欄で書いたのは、小児科医院での応答の一幕。
「このような話を見聞きするたびに、ふしぎに思うのは『近ごろの父親』のことです。こういう場面には、どうしてお父さんが登場しないのでしょうね」(東京の女性から)この問いかけが大方の声を代表している。恥ずかしながら私自身も、こどもの受診につきあったのは数えるほどもない。
小児科や老人科には、社会のひずみと矛盾が凝縮しているのだろう。お父さんの姿が見えない舞台で展開される悲喜劇を描いたつもりだったが、ここはやはり舞台裏ものぞかなければなるまい。お母さんたちの便りから、こんな状況が浮かぶ。
〈第一場〉冷たい父親。
 「あなた、たまには、お医者さんに連れていってよ」
 「こどもが熱を出したくらいで、男が仕事休んじゃ笑われるよ。医者の顔も知らないし」
 「私だって、会社にそう迷惑はかけられないのよ」
 というわけで、母親は焦って注射を求めたのかもしれない。
〈第二場〉寂しい母親。
こどもの具合が悪いと、お母さんは心配で仕方がないが、親身の相談相手がない。「なんでもないですよ」といってもらいたくて小児科を訪れる。涙は、医者にまで冷たくされた寂しさからか、声をかけてもらったうれしさの余りだったのか。
〈第三場〉こわい医者。 
お医者さんはいつも忙しそうで、こわい存在だ。それが、つっけんどんな○×式応答を生む背景になる。「父親不在で、家に閉じこもる母親を考えると、こんな応対はふしぎではない」という意見もあった。
 まだ数は少ないが、ひと昔前に比べて、小児科を訪れる父親は増えているそうだ。それは、ふだんからおむつの世話などをしていたお父さんだ。「近ごろの父親」のコラムが書けるような変化を期待したい。
 それにしても、優しいお母さんを困らせるとは、悪いお父さんでした。私も含めて。
(1993年3月1日,3月9日付朝日新聞夕刊「窓」による)
おむつ omutsu - diapers
 
問(1)  問1~問3は〔A〕を読んで答えなさい。②「自分中心の母」とは、この場合どんな母のことか。

1.こどものことより、自分の仕事を優先させて考える母
2.医者は患者の言うとおりに治療すべきだと思っている母
3.医者より医学的知識をたくさん持っていると思っている母
4.自分自身が薬がきらいなので、こどももそうだと考えている母
  
問(2)  ④「○×式の母」とは、この場合どんな母のことか。

1.正しいか正しくないかでしか、判断しない母。
2. ○× 教育の後遺症で医者にみてもらっている母
3.国会の証人喚問の答え方がいいと思っている母
4.質問に対して、必要最小限のことしか答えない母
  
問(3)  M先生が①「近ごろの若いお母さんには、まいります」といった理由として考えられるのは、次のうちのどれか。

1.医者を困らせようと考えて来る若い母親が増えたこと
2.医者と必要なやりとりができない若い母親が増えたこと
3.昔に比べてM先生のところに来る若い母親が増えたこと
4.子育ての方法を教えてもらいに来る若い母親が増えたこと
  
問(4)  問4・問5は〔B〕を読んで答えなさい。⑥「舞台裏」とは、この場合何のことか。

1.筆者がおかれた状況
2.医者がおかれた状況
3.母親がおかれた状況
4.こどもがおかれた状況
  
問(5)  ⑦「『近ごろの父親』のコラムが書けるような変花」として考えられる変化はどんな変化か。

1.M先生に病気をみてもらう父親が増えること
2.新聞のコラムを読んで投書をする父親が増えること
3.父親が登場する場面の多いドラマの上演が増えること
4.母親と同じようにこどもの世話をする父親が増えること
  
問(6)  間6~問8は〔A〕〔B〕両方を読んで答えなさい。②自分中心の母が自分中心的になった原因を筆者はどう考えているか。

1.夫が不在で寂しいから
2.子供がきらいだから
3.医者に冷たくされたから
4.夫の協力が得られないから
  
問(7)  ③「泣き虫の母」が泣き虫になった原因を筆者はどう考えているか。

1.医者にいじめられるから
2.こどもがよく病気をするから
3.子育ての相談相手がいないから
4.こどもの頃、しかられてばかりいたから
  
問(8)  ⑤「逆襲の便りが殺到した」理由として考えられることは次のうちどれか。

1.こどもの世話をする父親がいることが書かれていなかったから
2.医者の目からみた母親を、一方的に非難する記事だったから
3.寂しさをまぎらすために投書をする母親が大勢いるから
4.若い母親に困らされた医者に同情する読者が大勢いるから